今回、実践するのは、著者ウォルター・ブロック氏、訳者橘玲氏「不道徳な経済学──転売屋は社会に役立つ」<早川書房>に記載の教えです。

本書の教え

  • 不道徳なことも現実には社会に利益をもたらしている

本書のポイント

本書は、売春婦、ポン引き、女性差別主義者、麻薬密売人、シャブ中、恐喝者、ツイッタラー、ダフ屋、悪徳警官、ニセ札づくり、ホリエモン(!?)など一般的には不道徳な人とされている人々をヒーローだとしています。「えっ!なんで?」となると思います。本書の序説に『勘違いを治す「よく効く劇薬」』というタイトルでノーベル経済学賞の受賞者フリードリッヒ・フォン・ハイエクも次のように記載しています。

《まず最初に、「こんなことはとうてい信じられない!」と反発する。次いで、「いくらなんでもぶっ飛びすぎだろう」と思う。そして最後には、「まいったな。あんたが正しいよ」と納得するのだ》

物事は何を通してみるかによって見えるものが180度変わってくる

このことを本書に記載の「ダフ屋」を例をあげて説明すると、、、、

まずダフ屋とは、チケットの事前購入をしないでコンサートやイベントにやってきた人に、会場近辺で定価の何倍もの値段でチケットを売る者です。

これに対して、このような法外な値段になるのは、ダフ屋が買ったチケットを購入希望者がどんな言い値でも買うしかないまで売り惜しんできたからだと考え、そのような売り惜しみ行為を批判します。

それに対して著者はこのダフ屋に対する批判は不当だと主張します。

すなわち、ダフ屋は、通常貧しい人にチケットを並んで購入させます。そして、これ自体は貧しい人に仕事を与える行為になります。

一方で、仕事を休んだときの損害が大きいお金に余裕がある人々は、会社を休んで気軽に列を並んでチケットを購入するわけにはいきません。したがって、ダフ屋の提示額が一日分の給与額より安いならば、お金に余裕がある人がダフ屋を利用する価値があります。

このように、「ダフ屋は貧しい人に仕事を与え、多忙なお金に余裕がある人のためにチケットの購入代行をしている」ことになると説きます。

どうですか、みなさん?納得いったでしょうか?これはダフ屋の例でしたが、上述のようなその他の不道徳な人々についても擁護しています(ただし、そのような人々の行為が道徳的だとか適切だとか善行だとか主張しているわけではありません)。

このような考えの根底にあるのが「誰の権利も侵害していない者に対する権利の侵害は正当化できない」という考え(リバタリアニズム:自由原理主義)です。

このリバタリアニズムというメガネを通して不道徳な行為をみれば、その行為は社会に役立っているんだということがわかります。

これまでの経験や知見を通じて形成された自分なりのものの見方に、新たな見方が加わる、そんな一冊になっていると思います。

やってみたこと

本書の教えに沿って、この本の副題「転売屋は社会に役立つ」にも記載されている転売屋の問題を検討してみました。おそらく訳者が本書にこのような副題をつけたのも読者に転売屋の行為について考えてもらいたいからだと思われます。

転売屋とは、転売行為を行う者のことで、最近では「転売」と「バイヤー」を組み合わせた造語である「転売ヤー」と呼ばれています。転売の対象が有料チケットの場合には「ダフ屋」と呼ばれます(すなわち、ダフ屋は転売屋の一種です)。

この転売ヤーについては、コロナ禍においてマスクや消毒用アルコールを高額で転売する目的で転売ヤーによる買い占めが行われたことが社会問題として大きく取り上げられました。そして、国民生活安定緊急措置法に基づいて2020年3月15日からマスク及び消毒用アルコールの転売が規制されるようになりました(その後、政府は「供給量が一定程度改善した」として2020年8月29日に規制を解除しました)。

また、コロナ禍においては外出を控え、家の中で過ごす時間が増えることからNitendo Switch等のゲーム機も転売ヤーによる高額転売の対象となりました。このため、一部の家電量販店などは、転売目的での購入をさせないために転売防止策を設けるなどの措置を行っています。

このように社会問題として転売ヤーが取り上げられていました。

本書に記載されている「ダフ屋」を擁護する考えを「転売ヤー」に応用すると次のようになるかと思われます。

  • 転売ヤーは貧しい人々を使って転売目的の品物を購入させ、そうして購入した品物をお金に余裕がある人々に販売している

このように転売ヤーは貧しい人々に仕事を与え、お金に余裕がある人々の購入代行を行っているのであり、あとは需要と供給の関係によって転売価格が決まるだけだということになるかと思います。

コロナ禍での高額転売行為は、我々の感受性を逆なでする不道徳な行為ではあると思います。その感情的な面を脇に置き、「誰の権利も侵害していない者に対する権利の侵害は正当化できない」というリバタリアニズムのメガネを通してみると高額転売行為に対する見方も変わるのかもしれません。

やってみてわかったこと

「人は感情の生き物である」とも言われていることからもわかるように、われわれには、感受性を逆なでするような不道徳な行為についてそれをやめさせようとしたり、排除したり、軽蔑したり、目を背けたり、と不道徳な行為を否定する力が働きます。

そのような力が働く社会で、(善行でないにしても)自らのビジネスを推し進めている人々がいることを改めて実感するとともに、その行為が他人の権利を侵害する暴力を伴わないものであれば、実は社会の役に立っているかもしれないと思えるようになりました。

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もし、皆さんも本書の教えを実践し効果等あった場合にはコメントいただけるとありがたいです。

なお、上記はオネストの個人的な見解を含むものとなっています。すべての方に当てはまるものではないことをご了承ください。

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